映画【BAC Nord】
お正月休みに前から観たかったCédric Jimenez監督の作品【BAC Nord】邦題は【バック ノール】(余談:なぜ、ノール・・・?)を鑑賞。
BAC Nordは「Brigade Anti-Climinalité du Nord」マルセイユ北地区の警察内犯罪防止班の実話を基に制作されています。
この映画を観られたかたでフランスにこんなところあるの???「エミリー・イン・パリス」が、フランスだと思っていた!という方にはかなりショックだったと思います。
映画に描かれているような地区はフランス国内の大都市、パリにもリヨンにもニースにもトゥールーズにもあります。
マルセイユとは
マルセイユはフランス人がバカンスで過ごしたい場所ランキングでいつも上位にあるフランス第二の都市。パリからTGVで3時間弱、地中海に面した都市。
ポーランドに住むフランス人HUGOが彼のYouTube番組でフランスの都市紹介シリーズで紹介していたのでマルセイユに住んでいたわたしの印象とともに紹介してみたいと思います。
マルセイユは紀元前6世紀、ギリシャのPhocidienによってできた都市Massalia が起源。マルセイユ人をPhoceen と言ったりします。
ちなみにパリをLutetiaということがあります。パリは5世紀くらいまではLutecia:ラテン語で沼の街、泥の街と言われていたことにちなんでいます。ですのでパリジャンのかわりに、ルテシアンとパリ人のことを表現できます。
では、マルセイユについてHUGOが紹介している順序にちなんで、1から11まで紹介します。どちらかというとフランス人が感じるマルセイユとは、という紹介です。
日本人が感じる大阪みたいな感じですかね。
I.アクセント
マルセイユの人が喋るフランス語のアクセント、これは有名です。教材で習う標準フランス語とはかなり違います。
on, en, anの鼻母音が標準的なイントネーションと違うというところが特徴的でしょうか。良い言い方をすれば歌うような喋り方で、悪く言うと田舎くさい感じです。
30年代から40年代のFernandelが演じたParcel PAGNOLの作品でマルセイユ、プロヴァンス地方の生活、文化、言語の様子が伺えます。
冒頭で紹介した「BAC Nord」でもマルセイユ独特の喋り方が聞けますし、2016年の「フレンチ・コネクション 史上最強の麻薬戦争」でもLucien刑事がマルセイユ弁でセリフをまわしています。
II. 表現方法
マルセイユでFadaというと、Fou(おかしい、狂っている)、Canéは、Fatigué(疲れた、疲労困憊)DégunはPersonne(誰もいない)
マルセイユで働いていた時は同僚がよくこれらの言葉を使っていました。
III. 観光スポット
有名どころはViex Port(旧港)そしてこの港からつづくCannebière通り。Viex Portからは夏場、巌窟王で有名なイフ島にいく遊覧船がでています。とにかく人が多くて、車の往来も多く、にぎやかな場所です。
Notre dame de la Garde 港を見下ろす大聖堂のBonne Mère(マリア様)が有名です。Viex Port から81番の市バスに乗って教会までいけば、安上り!マルセイユの街が一望できる素敵な場所です。
そしてCalanque。石灰岩の崖や小さな入り江からなるカランクは手つかずの自然がのこりその自然によって生み出される独特の自然環境により国立公園に定められています。ハイキングするもよし、シーカヤックをするもよし、ただただ眺望を眺め自然を満喫するのもよしといった場所。
Calanqueに行くときは、靴に気をつけましょう!石灰岩の崖のうえを歩くので、しっかりとしたスニーカーを履くことをおすすめします。
IV. グルメ
なんといっても、Bouillabaisse (ブイヤベース)。もともとは漁師さんが自分たちの食事のためにいろいろな魚を雑魚煮していたもの。レストランなどで提供されるようになり高級な食事に様変わり。
ブイヤベースが提供される前にでてくるクルトンとアリオリソースがとってもおいしいので食べ過ぎて肝心のブイヤベースを食べる前にお腹を膨らませないよう注意してくださいね。
手ごろなビストロから高級レストランまでいろいろなところで食することが可能ですが、すでにできあがった冷凍ものやビン詰めにされたものを温めて提供しているところもあるのでご注意を。
マルセイユで有名なお酒といえば、Pastis (パスティス)。アニス、リコリス、フェンネルなどが原料のお酒。オーダーするときは51とオーダーしてもOKです。
そして南仏ではワインのロゼのロック(氷割り)を良く飲みます。
V. マルセイユ石鹸
ルイ14世の時代、動物の油脂を使用した石鹸製造が禁止となり、オリーブオイルで石鹸づくりを始めたのがきっかけで、マルセイユ石鹸がフランス国内で有名となり、周辺国に輸出されるようになり現代に至ります。
クラッシックなマルセイユ石鹸は、お洗濯、からだや顔洗い、掃除にとマルチにつかうことが可能。
VI. ペタンク
比較的歳を重ねた方がプレイしているマルセイユが発祥のスポーツ。おじちゃんが公園で集まって楽しんでいる光景が良く見受けられます。Cochonnetというボールをボールにあてていきます。世界大会もあるスポーツです。
Olympique Marseille
フットボール好きならご存知のオリンピック・マルセイユ。このチームのファンの姿は大阪の阪神ファンと重なるものがあります。
試合のある日は、OMのユニフォームやグッズを身にまとったサポーターたちがViex Port のバーに大集合!その数はすごい!くれぐれもPSG(パリ・サンジェルマン) のユニフォームを着て近づいたり、話をしないように!
Allez OM!!!!!!
VII. コスモポリタンなマルセイユ
マルセイユは地中海に面した街。港街であり、もともと人々とモノの交流・交易のおおいところ。人口の30パーセントは外国に起源をもつ人、生まれた人たちです。
19世紀、第一次移民ブームでたくさんのイタリア人がやってきて、20世紀初頭の移民ブームではアルメニア人そして20世紀中盤あたりからマグレバン(チュニジア・アルジェリア・モロッコ)がやってきました。もちろんその他の国の方々もたくさん居住しています。
VIII. フランスのRAPといえば、マルセイユ!
イタリア、スペイン、セネガルなど6か国の違う出身者によるIAM,Fonky Family,Psy4 de la rime, keny ALKANAなど有名なラッパーはみんなマルセイユ出身!
IX. 2013ヨーロッパの文化都市に
冒頭で紹介した映画BAC Nordのようにマルセイユに危険なイメージを抱くかたも多いとおもいます。マルセイユ北地区の学校に勤務していた教師の友人が危険手当が支払われるんだよ、と言っていました。
そして更に政治家や警官、起業家などの間での収賄が有名。Gérard Dupardieu主演のドラマシリーズ「マルセイユ」(Netflixで視聴可)でその様子が伺え、マルセイユの深い問題、黒い部分が描かれています。
しかしそんなマイナスイメージとは違う側面もあります。Covid-19以来、パリの人が転居先に選ぶ都市としてNo1となり、芸術家がアトリエを構えたり、新しい美術館がオープンしたり、2013年以来ヨーロッパの文化都市になっています。
Salon de Provence出身のクリエーターJAQUEMUS氏はProvenceのラベンダー畑やマルセイユで彼のコレクションのショーをし、南仏出身のクリエーターとして南仏の自然とアートの融合を彼のコレクションとしてプレゼンテーションしています。
X. 大げさなマルセイユの人々
何かを語るとき、おおげさに表現するマルセイユの人たち。元同僚が、数年前にマルセイユに滅多に降らない雪が降ったとき、Apocalypse(終末)だ!とマルセイユの人たちが大騒ぎしていたんだよ!と話していました。ほんと、大げさですよね。
そして、女性のファッションも大げさな感じ。なんか大阪の派手な人と似てる感じもします。そんな方たちをLa Cagoleと言います。その男性版はLe Cacouです。
XI. 国歌
テレビで香川照之さんがフランス国歌を歌っている姿をみますね。なぜフランス国家を「La Marseillaise」というのでしょうか。
この歌詞は、フランス革命時、ストラスブールの軍人Roget de Lisleによって創作されフランス中に広まりました。マルセイユの兵士がパリの兵士を助けに向かった時に歌っていたため、マルセイユで生まれた歌だと勘違いしたのがはじまりだそうです。
まとめ
マルセイユはフランスに住んでいた時に4年間過ごした場所。フランスの第二都市で海も近く、そして国際色豊かで比較的物価も安かったです。
地区によっては、とても汚い場所があったりするのでマルセイユが嫌いだというフランス人も結構いたりします。
ギリシャの植民都市の人々が定着し発展した考古学的、地政学的にもとても重要な場所です。汚職や治安の悪さで有名なイメージを払拭させるべく努力を重ね、街を整備しています。そのたびに古代の遺跡がでてきて工事にSTOPがかかったりしていますが古代遺跡を大切に保存し街はどんどん変化を遂げています。
Covid-19の感染拡大が収束したら、ぜひ訪れてみてください。
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